「仕事は楽しいですか?」に対して先輩が教えてくれたこと
その時はちょうど仕事が繁忙期で、日を超えて仕事をし続けることが多くなっていた。
だから、身体もそうだけれど、心も疲弊していた時期だった。
やってもやっても終わりが見えない、良いものにしたいのに手が打てない。
身体も心も疲弊していたある日のこと。
その日もまた、日を超えて作業をしていた。
隣にいる先輩も同じように連日のように残って作業を続けている。
さすがに疲れもたまってきて、おもむろに聞いてみた。
「仕事は楽しいですか?」
少し考えてこう答えてくれた。
「仕事を楽しいと思えるようになったのは、30歳を超えてからだよ。
20代はただひたすらがむしゃらにやっていた、目の前に有るものと向き合うことで精一杯だったから。
だから、一人でなんでも幅広くこなせるだけの技術を得た、30歳を越えてから、ようやく仕事が楽しいと思えるようになったかな。」
前職ではデザイナーで、現在はディレクターとしてバリバリ活躍している先輩からの言葉だったから、驚いたと同時に、ふっと肩の荷が降りたような気がした。
これだけできる人でも、そういう風に思えたのはそんなに後だったんだなと思えたから。
その日から、少しだけ気を楽にして仕事に向き合えるようになった。
それからしばらくして、その言葉の意味について、自分なりに少し考えてみた。
たしかに、楽しいと思えるようになるのは、後になってからなのかもしれない。
何かをはじめた時は、どんどんとできることが増え、自分が成長していく様子が分かるから、楽しんでいられる。
でも、ある程度の技術を得てしまうと、幸か不幸か、視野が広がり自分のレベルがどれくらいなのかが見えてきてしまう。
それに成長速度も遅く、もっとできるようになりたいという気持ちとのジレンマばかりが膨らんでいってしまう。
だから、一人でなんでも幅広くこなせるだけの技術や経験が得られて、ようやくもう一度楽しいと思えるようになるのではないだろうか。
「仕事が楽しい」というのは、技術と経験の上に成り立つものなのかもしれない。
だとすれば、今はただ、がむしゃらに走り続ける時なのだ。